「母とだけは、どうしても分かり合えないんです」——先日の鑑定は、五十代の女性のこんな一言から始まりました。会社では人間関係で困ったことがない。友人にも恵まれている。それなのに、実の母と三十分話すと、決まって胸の奥が重くなるのだそうです。「私のほうがおかしいんでしょうか」と、とても申し訳なさそうにおっしゃいました。
お二人の宿命を並べて拝見すると、答えははっきりしていました。おかしいところなど、どこにもありません。ただ、お母さまとその方は、物事の受け取り方の「速さ」がまるで違っていたのです。お母さまは感じたことをその場で言葉にして流していく方、娘さんは一度自分の中に置いて、時間をかけて確かめてから答える方。同じ会話をしていても、片方が投げ終わった頃に、もう片方はまだ受け取っている途中なのですね。
そのことをお伝えすると、その方はしばらく黙ってから、「じゃあ、私は母を嫌いだったわけじゃなかったんですね」とおっしゃいました。相性のご相談で、私がいちばん多く立ち会うのがこの瞬間です。今日は、五星算命学(算命学)で「相性」をどう読み解くのか、そして相性を知ることが人との関わり方をどう変えるのかを、鑑定の現場からお話ししていきます。
算命学でいう「相性」とは何か
良い・悪いではなく、「関係の形」を見ている
最初にお伝えしておきたいのが、算命学の相性鑑定は、点数をつける作業ではないということです。「この二人は八十点」「この組み合わせは相性が悪い」——そういうお答えを期待していらっしゃる方は多いのですが、私はそういう見方をしません。
算命学で見ているのは、お二人がどういう形で噛み合うのか、という「関係の形」です。並んで同じ方向を向くと力が出る組み合わせもあれば、向かい合って刺激し合うことで伸びる組み合わせもある。少し距離を置いたほうが、お互いの良さが長持ちする組み合わせもあります。形が違うだけで、そこに優劣はありません。
ですから私は、「相性が悪いから別れたほうがいい」という言い方はしません。その代わりに、「この関係は、こういう形で噛み合っています。だから、この距離感で付き合うと楽になりますよ」とお伝えしています。
生まれ持った気の違いが、噛み合い方を決める
算命学では、生年月日から、その方が生まれ持った気の質を読み解きます。外へ広がっていく質の方、内へ深めていく質の方、まわりを支える質の方、前に立って引っ張る質の方。どれも持って生まれたもので、努力で変えられるものではありません。
相性は、この気と気が出会ったときに何が起きるかを見ていきます。互いを育てる働きになることもあれば、互いを削り合う働きになることもある。冒頭の親子でいえば、お母さまは勢いよく外へ出す質、娘さんはじっくり内に収める質でした。どちらも立派な性質ですが、この二つがそのままぶつかると、出す側は「反応が薄い」と感じ、収める側は「急かされている」と感じます。誰も悪くないのに、毎回同じところでつまずくのです。
「合わない」と感じるとき、実際に起きていること
同じ言葉が、違う意味で届いている
相性のご相談を伺っていて、いちばん多いと感じるのが、この行き違いです。片方は励ますつもりで「もっとこうしたらいいのに」と言う。もう片方はそれを「今のあなたでは足りない」と受け取る。言った側に悪気はまったくないので、なぜ相手が黙り込んだのか分かりません。
これが一度や二度なら、誰にでもあることです。けれど気の質が大きく違う二人の間では、これが毎日のように起こります。そして積み重なるうちに、「この人とは合わない」という形に固まっていくのです。本当は合わないのではなく、届き方が違っているだけなのですが。
近すぎる関係ほど、ずれが痛みになる
もうひとつ、覚えておいていただきたいことがあります。相性のずれは、関係が近いほど強く出る、ということです。
取引先の方となら、多少合わなくても仕事の話だけで済みます。けれど家族や夫婦は、逃げ場がありません。朝起きてから寝るまで、生活のあらゆる場面で気の質がぶつかります。だから、「職場では困らないのに家族とだけうまくいかない」という方は、決して珍しくないのです。冒頭の女性もそうでした。人付き合いが下手なのではなく、いちばん近い相手と、いちばん距離の取りにくい形で向き合っていただけなのです。
噛み合い方の三つの形と、それぞれの付き合い方
一つめ:支え合う形——楽だからこそ、外の風を入れる
片方の気がもう片方を育てる関係です。一緒にいると呼吸が合い、説明しなくても通じる。多くの方が「相性がいい」と呼ぶのは、この形でしょう。
ただ、この形にも気をつけたい点があります。居心地が良すぎて、二人の世界が閉じてしまうことがあるのです。支える側がいつのまにか与えてばかりになり、何年か経って急に疲れ果ててしまう。そういうご相談も実際にあります。この形の方には、意識して外の人と会う時間を持ってください、とお伝えしています。
二つめ:刺激し合う形——ぶつかることが、悪いしるしではない
意見が食い違いやすく、話していると熱くなる関係です。ご本人たちは「相性が悪い」と思い込んでいることが多いのですが、私はこの形をむしろ頼もしいと見ています。
互いに違うものを持っているから、ぶつかるのです。そして違うものを持っている相手は、自分ひとりでは行けない場所へ連れていってくれます。実際、長く続いているご夫婦や、大きな仕事を一緒に成し遂げた方々には、この形が驚くほど多い。大切なのは、ぶつかったときに勝ち負けにしないことです。「この人は私と違う見え方をしている」と一度置いてみるだけで、この形はとても豊かに働きます。
三つめ:距離が要る形——離れることは、拒むことではない
一緒にいる時間が長くなるほど、どちらかが消耗していく関係もあります。悪意がなくても、気の質が互いを削ってしまう組み合わせです。
この形が親子や職場で出たときは、「縁を切りましょう」ではなく、「会う頻度と時間を決めましょう」とお伝えします。週に一度、一時間だけ。そう決めるだけで、同じ相手との関係が驚くほど穏やかになることがあります。距離を取ることは、相手を拒むことではありません。関係を長持ちさせるための、いちばん現実的な知恵です。
鑑定の現場から:相性を知って、関係が変わったお二人
「嫁いびり」だと思っていたことが、そうではなかった方
結婚して十年、お姑さんとの関係に悩んでこられた三十代の女性がいらっしゃいました。何をしても細かく口を出される。自分は嫌われているのだと、ずっと思っていらしたそうです。
お二人の宿命を拝見すると、お姑さまは、気になったことを言わずにいられない質の方でした。しかもそれは、身内と認めた相手にだけ強く出る性質です。「これは、あなたを家族だと思っているからこそ出ている形ですよ」とお伝えしたら、その方は絶句されて、それから泣かれました。
もちろん、言われて苦しいことに変わりはありません。ですからその後、「全部を受け取らなくていいですよ。三つ言われたら、一つだけ返事をしてください」ともお伝えしました。今は月に一度、笑ってお茶ができる関係になったそうです。
「会話がない」ことを悩まなくなったご夫婦
もう一組は、結婚二十年を過ぎたご夫婦です。奥さまが「夫とほとんど会話がない。冷めてしまったのだと思う」とご相談にみえました。
ところがご主人の宿命は、言葉ではなく行いで示す質が非常に強い方でした。伺えば、毎朝奥さまの車のフロントガラスを拭いてから出勤されているとのこと。ご本人はそれを愛情表現だと思っていて、奥さまは「やって当たり前のこと」として見過ごしていらした。
そのことをお話しすると、奥さまは「あれがそうだったんですか」とおっしゃいました。相性を読むというのは、こういうふうに、すでにそこにあるものに気づく作業でもあるのです。
相性を知ったあと、暮らしの中でできること
相手に期待する役割を、ひとつ減らす
私がよくお伝えするのが、これです。私たちは近しい相手に、話し相手であってほしい、支えてほしい、分かってほしいと、いくつもの役割を重ねて期待してしまいます。けれど、一人の人が担える役割には限りがあります。
その方の気の質に合わない役割をひとつ手放して、それは別の場所で満たす。愚痴を聞いてもらうのは友人に、黙って一緒にいる時間は家族と。そう分けただけで、家の中の空気が変わったとおっしゃる方が本当に多いのです。
合わない人を、切らずに済ませる距離の取り方
職場の上司、親戚、子どもの学校で関わる方。相性が合わなくても離れられない相手は、どうしてもいます。
そういうときは、関わる場面をあらかじめ決めておくことをおすすめしています。この話題では話す、この話題には踏み込まない。連絡は決まった時間にまとめて返す。自分の中で線を引いておくと、相手の言動に振り回される量がぐっと減ります。相性は、相手を変える道具ではなく、自分の身の置き方を決めるための地図なのです。
よくあるご質問
相性が悪いと出たら、別れたほうがいいのでしょうか
いいえ。算命学の相性は、別れるかどうかを決めるためのものではありません。噛み合い方の形が分かれば、その形に合った距離の取り方が見えてきます。長く続いているご夫婦の中にも、いわゆる「難しい」組み合わせの方はたくさんいらっしゃいます。
相手の生年月日が分からなくても鑑定できますか
相性そのものを見るには、お二人の生年月日が必要です。ただ、ご自身の宿命だけでも、どういう相手とつまずきやすいか、どんな関わり方で消耗しやすいかは読み解けます。まずはご自身を知るところから始めていただくのも、十分に意味のあることです。
相性は、途中で変わることがありますか
生まれ持った気の関係そのものは変わりません。ただ、お互いに巡ってくる運気は年ごとに動きますので、同じ組み合わせでも、楽に噛み合う時期と、ぎくしゃくしやすい時期があります。「今年はなぜか衝突が多い」と感じるときは、関係が壊れたのではなく、時期の影響であることが少なくありません。
子どもとの相性も見てもらえますか
はい。親子の相性は、ご相談の中でもとくに多いものです。「厳しくしつけたほうが伸びる子」と「見守られて伸びる子」では、同じ育て方をしても結果がまるで違います。お子さんの気の質が分かると、親御さんの接し方がずいぶん楽になります。
まとめ
算命学の相性は、合格点を出すためのものでも、誰かを切り捨てるためのものでもありません。生まれ持った気と気が、どういう形で出会っているのかを知るためのものです。
形が分かると、不思議なことに、相手を責める気持ちも、自分を責める気持ちも静かになっていきます。「合わないのは、どちらかが悪いからではなかったのだ」と分かるからです。そして責める必要がなくなったところから、ようやく、その人との現実的な付き合い方を考えられるようになります。
冒頭の女性は、鑑定のあと、お母さまとの電話を「十五分で切る」と決められたそうです。たったそれだけのことですが、以来ずいぶん穏やかに話せるようになったとご連絡をいただきました。相性を知るというのは、劇的に何かを変えることではなく、こういう小さな置き直しができるようになることなのだと、私は思っています。
どうしても分かり合えない相手がいて、そのことでご自身を責めていらっしゃるなら、一度お二人の宿命を並べて見てみませんか。そこには、責める理由ではなく、これからの距離の取り方が書かれているはずです。

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